謎の国宝「鳥獣戯画(Kemono Giga)」:カエルとウサギが相撲をとる理由
Rachel Ross
Updated on July 21, 2026
ウサギとカエルが真剣勝負の相撲をとっている。フクロウがお経を読んでいる。キツネが僧侶の格好をして逃げていく。何の脈絡もなく、突然、画面いっぱいに水がドバッと描かれている。
これは夢か、はたまた誰かの悪ふざけか。
いいや、これは立派な国宝だ。正式名称を「鳥獣人物戯画(ちょうじゅうじんぶつぎが)」。一般には「鳥獣戯画」、あるいはローマ字表記の「Kemono Giga」として世界中のアートファンに知られている。京都・高山寺に伝わり、現在は東京国立博物館と京都国立博物館に寄託された、日本絵巻物の頂点のひとつである。
この作品の前で笑わない者はいない。しかし、ただ笑うだけでは終わらせてはいけない。その笑いの奥には、日本文化の深層が、そして筆墨の極致が潜んでいるのだ。
Kemono Gigaとは何か:「日本最古のマンガ」という呼称
まずは基本から押さえよう。我々がひとまとめに「Kemono Giga」と呼ぶ作品は、実は四巻からなる壮大な絵巻物だ。どれもが異なる個性を持っている。
甲巻が最も有名だ。動物たちが擬人化され、水遊び、相撲、弓矢、法会など、人間社会の風俗を猿や兎、狐、蛙が演じる。このコミカルな世界観が、多くの人の頭に浮かぶ「鳥獣戯画」のイメージそのものである。続く乙巻も動物が主役だが、甲巻のような物語性は薄く、どちらかといえば野生の躍動感が強調されている。絵のタッチはより粗く、激しい。
ところが、丙巻で空気が一変する。ここでは人間が主役だ。坊主たちが滑稽な姿